「あんたの好きな色って何?」
いつもの屋上で、彼女は唐突に言った。
「好きな色?」
「そう、好きな色」
好きな、色…。
改めて考えると、好きな色って何だろう?
「絶対にこの色でなくては嫌だ」という拘りは生憎持ち合わせていない。
色は色でしかなく、興味の対象ではない。
もしかして、よく手にとってしまうものが好きな色になるのだろうか。
そうなると、もうあの色しかない。
「黒、かな。何でも合うし」
「無難カラーね」
確かに無難な色だから選んだのだが。
そんな冷めた調子で言われると、まるで滑ったみたいじゃないか。
「そういうお前は何色が好きなんだよ」
いくら冷めている彼女でも、所詮は女子。
どうせ、ピンクとかそのへんの色だろう。
「#003149」
「なんて?」
なんか、予想外なものが返ってきたんだが。
何で数字なんだよ。
ハッシュ…ゼロゼロ、3、イチ、4、キュウ?
なにそれ。
色、なんだよな?
「女性ものでは、なかなかないのよね」
彼女は頬に手を当て、ふーっとため息を付いている。
俺はそっとスマホを取り出し、「色 #003149」で検索をかけた。
スマホに現れた色を見た俺は、彼女を一般女子の感覚で接してはいけないのだと改めて肝に銘じた。
6/21/2024, 1:18:04 PM