お題『何もいらない』
『君以外何もいらない。愛しています』
そう言ってくれたのはもう何年前の話だっただろうか。照れ屋でまっすぐに感情を表現するのが苦手なあなたは耳まで赤くしながらそう言ってくれた。
何かをプレゼントしてもらったときよりもずっと嬉しかった。
本当にあなたさえ居てくれたら私も何もいらなかったのに。なんて。
あなたの為に用意した温かいご飯もすっかり冷えて、少し固くなっている。こうして夜、誰もいない部屋で時計をただ眺めるだけの日々はいつからだったのだろう。
椅子の上に足を持ち上げ抱える。こうして丸くなってこの寒さを耐えるのもどれくらいになったのだろう。
『君以外何もいらない』って。
「嘘つき」
そう呟いた言葉は誰に聞かれることもなく空気に溶けた。
4/20/2024, 12:30:19 PM