霧雨がしっとりと身体を濡らしていく中、傘を持たずに佇む俺の毛先からぽとりと小さな水滴が落ちる。もう少し強く降ってくれないと困るな、と軽く空を見上げたけれどむしろ雲の合間からは光が射してきた。頬を伝う水滴は雨粒よりもずっと大きくて、これでは誤魔化せやしない。あんたにこれ以上心配かけたく無いんですけど。これで俺はちゃんとやってますよ、なんて言っても信じてもらえないですかね。聞こえない返事に苦笑して、冷たい石にそっと口付けた。『柔らかい雨』
11/6/2023, 12:45:26 PM