流れ着いたメッセージボトル

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__そうして再び巡り会う為の長い旅が始まったのでした。


パタリと本を閉じる。
良い話だった……。つい先日図書室で久々に好みの本を見つけたと思ったら、内容も結末が気になってついつい読み進めたくなるような素敵な内容だった。
一つ疑問があるのは、この本が作者名も出版社も何も書かれていない不思議な本だと言う事くらいか。
本の表紙をさらりと撫ぜ、ぼんやりと窓の外を眺める。

もしかしたら私も大切な人に再び巡り会う為にこの星に生まれた、とかだったりして。
と、先程読んでいた本の物語を追想するように突拍子も無いことを考えてみる。

「なーに読んでたのっ!」
「うわぁ?!びっくりした!」

突然後ろから友人に抱きつかれ、ふわふわとした思考が現実に引き戻される。

「あれ、それこの間久々に見つけたーって言ってた不思議な本?読み終わったんだ?」
「そうそうたった今ちょうど読み終わってさ。…あ、そうだ!是非読んでみてよ。すっごく良い話だったんだから!」
「えぇー気にはなるけど、私が本読むの苦手なの知ってるでしょ?内容だけ教えてよ。」
「も〜こういうのは自分で読み進めるから良い物なのに。……仕方ないなぁ。」

そうして物語のあらすじを友人に話していると、ちょうど通りかかった先生に呼び出された。

「ごめん、ちょっと行ってくるね!後で続き話すから!」
「はーい、行ってらっしゃーい」





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……静かになった教室で、先程まで彼女が読んでいた本をそっと持ち上げる。
もしも、この物語が実話だって言ったら彼女は信じてくれるだろうか?



「………………ようやく、巡り会えたんだ。」



ポツリと呟かれた言葉は、誰に届くこと無く空に消えていった。



#好きな本

6/16/2024, 5:39:54 AM