旅舟

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題名『いたずら』
(裏テーマ・突然の別れ)


 朝は、目覚まし時計が鳴らなかった。そのせいで仕事に遅刻して恥をかいた。
 昼は定食屋の玉子巻きに殻が入ってた。文句は言わず黙って食べたが気分は沈んだ。
 仕事の外回りで歩いていたら靴底が破れた。確かに古いのに無理して履いていたが靴底が剥がれるなんて想像してなかった。
 その夜、居酒屋に寄って注文したらなかなか品物が来ない。痺れを切らし我慢の限界で店員に聞いたら品切れらしい。だったら早くそう言えって怒りたくなったが、まわりの目も気になり他の串とかを注文した。
 家に帰る途中で自動販売機を見つけ、コーヒーを買うためにお金を入れてボタンを押した。出ない。出ない。あきらめる。

 なんて日なんだろうと思いながら風呂に入ると今度は排水口が詰まった。裸で少し寒い中、掃除をした。
 寝る前に小腹が空いてカップラーメンを食べることにする。フタを開け粉末だしやかやくを麺の上に出しお湯を入れるため保温ポットの電動給湯ボタンを押してもお湯が出ない。何度押しても出ない。結局これは壊れていた。買い替え決定。しょうがなく雪平鍋で水を沸かしカップラーメンに注いだ。

 さぁ寝ようと思ったら、テーブルからスマホを落とす。画面が割れる。

 それでもまた明日も寝坊するわけにもいかないと布団をかぶって寝ようとしたら、電話が鳴る。

 祖母の急死の連絡だった。

 まったく関係ないかもしれないが、朝からのいろんな出来事が一本の線で繋がった気がした。

 お婆ちゃんはいたずらが大好きだったんだ。
 最後のお別れに会いに来てくれていたんだろう。
 考えてみれば、お婆ちゃんの家によく泊まっていたけど最近は正月に顔を見せるくらいになっていた。

 突然の別れだったけど、1日を振り返ると心が熱くなった。

 昔お婆ちゃんと一緒に寝た時、寝つけない僕に、面白おかしくお婆ちゃんの失敗談とかを話してくれたんだ。
 そうそう、全部お婆ちゃんの失敗談だ。

 やられたー。

 葬式の時に少し怒ってやろうと思ったら、視界が歪んで見えなくなった。泣いていた。
 そうか、明日と明後日は仕事を休まないと。

 翌朝、ポストに祖母からのハガキが入ってた。
 そうか昨夜はポストを見なかった。
「たまには顔を見せろ。じゃないと、いたずらするぞ!」って書かれていた。
 寂しかったのかな。

「ごめんね、お婆ちゃん………」

5/19/2024, 12:40:49 PM