えし

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終点

あー、終わった

終点ですよと車掌さんから優しく声をかけられ、トボトボと電車を降り、改札を出る。それと同時にPASMOからお金がごっそり取られる。ただの高校生にはキツい金額だ。後から考えれば、改札を出ずに下りの電車に乗ればよかっただけだけど、そんな考えは無かった。

駅から出てあてもなくひたすら歩く。今日サボることになってしまった学校のこととか今日の提出物とか、友達との約束も全部忘れて。

あー、まじで終わったー

声に出すだけで、絶望感は更々ない。
今考えてるのは——いや、なんも考えてなかったわ。

開けた場所に出ると海が見えた。午前9時という微妙な時間の太陽の光を浴びて海が輝いていた。潮風を受けつつ砂浜へ降りると、社会人っぽい女性がいた。

こんなところで何してるんですか?

こんな状況になると人見知りのタガは外れるらしい。もしかしたら自殺かなぁとか呑気に考える。

びっくりした…高校生?あなたこそ、何でここに?
寝てたら終電まで来ちゃいました。おねーさんもですか?
私は…終点じゃなくて始発。電車に乗ろうと思ったら、固まっちゃって、会社に休みの連絡して久々にボーっとしてるところ。
やっぱり社会人ってちゃんとしてますね〜。私は親にも学校にも連絡してません!
まぁ会社と学校じゃ、ちょっと違うから。

よかった、自殺じゃないみたい。でも、電車に乗れなくなったって言ってたから、何かあったのかな。
ない頭を使って必死に考える。そして導いた1つの答え

やっぱり、サボりといったら海ではしゃぐことだと思うんです。だから一緒に海入りましょう!

勢いよく立ち、おねーさんを見る。何言ってんだこいつって顔で見られてた。そんなのお構いなしに、手を取って海に走る。

あ、おねーさんズボンだから少ししか入れないですね。
すいません!私だけ結構入っちゃって!

戸惑うおねーさんを他所にじゃぶじゃぶ入る。スカートI折りでめちゃめちゃ上まで上げてるからね。朝だからか、水が少し冷たくて気持ちいい。

私、テストで赤点取って結構落ち込んでたんです。でもなんか、終電までずっと寝て起きて考えると、私じゃなくて先生のせいでは?って思ってきて、だって平均点が赤点越えてないって可笑しいでしょ!何だよ誰も褒められる点数とってないって!お前のせいなんだよー!!
ばーか!!!!!

思いの丈を全部言ってスッキリした。晴れ晴れとした顔で振り返ると、おねーさんが、初めて笑ってくれた。

それでね、おねーさんも濡れるの気にせず、入ってきてくれてね、一緒に叫んでストレス発散したの!めっちゃ楽しかった〜!
なんかよくわかんないけど、よかったね。で、赤点取ったにも関わらず、提出物出さないで、海で遊んでたお馬鹿さん?とっとと課題終わらせてくれる?
…はーい

楽しく遊んでいた時とは一変して、友達に睨まれながら学校で課題をやる羽目になってしまった。
また、いつか会えるといいな。

8/10/2024, 2:01:13 PM