Clock

Open App

〜神様へ〜

古くなった境内の中。一枚の大きな木の葉が賽銭箱の上に置き石の代わりの果実と共に置かれていた。その木の葉には拙い子供の字で何かが書き連ねられていた。


はいけい神様

お元気ですか、ぼくはあの時たすけてもらった者です。いまぼくは父ちゃんと母ちゃんといっしょにくらしています。神様はさびしくないですか、もし寂しかったら、また遊びに行ってもいいですか
おへんじ待ってます。

██より



面をつけた青年にも見える人物はふっと微笑み木の葉を手に取り大事そうに懐に直した。はらはらと落ちる花を集めほんのりと色付いた紙に墨をのせる。
流れるような筆記は子供では読むのが難しいだろうかと気づいてからケタケタ笑った。面の奥に隠れる瞳を拭いその紙を飛行機の形に折り曲げ飛ばした。
紙飛行機は風に逆らうように森の方に進んでいく。鳥も虫も全てを追い抜き、小さな岩穴の前に落ちた。中からとたとたと走る足音が聞こえてくる。落ちていた紙飛行機を見つけると全身の毛を逆立てるように身震いして喜んだ。頭に生えている耳がピルピルと動き尾が取れるのではないかという速さで揺れた。手に取った手紙をカサカサと開いた子供はじっくりと時間をかけるように文面に目を通した。



拝啓狐の小僧よ

4/14/2024, 11:17:48 AM