ぼくとおかあさんは、山でくらしています。
今日は、ふたりでまちへ買い物にきました。
きらきらの石や、りっぱな服がいっぱいあります。たまに、いいにおいもします。
「おかあさん、あれ食べたい」
でも、おかあさんにいくら言っても、食べものだけは買ってもらえませんでした。
結局、ぼくの服とおかあさんの服をいくつか買って、帰ることになりました。ふわふわの丸いパンも、ちゃいろいお魚も、ひとつも買ってもらえませんでした。
山にもどってから、ぼくはおかあさんに聞きました。
「どうしてまちの食べものは買ってくれなかったの?」
すると、おかあさんはこう言いました。
「街の食べ物を食べたら、ここに戻って来れなくなるからよ」
どうやら、まちにいる"ニンゲン"という生きものが作る食べものは、とってもあぶないのだそうです。食べてしまうと、二度と山のものを食べられないのろいをかけられるのだそうです。
ぼくは、おかあさんといっしょにまちへ行ってせいかいだと思いました。そして、"ニンゲン"はとてもおそろしい生きものだと思いました。
やっぱり、ぼくたちタヌキは山でのんびりしているのが一番です。
1/28/2024, 1:20:00 PM