ころ

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急に友人から封筒が届くようになった。
前触れもなく関係者全員との連絡を断ち、行方もくらまし、もしかしたらあいつは死んだんじゃないかと仲間内でも騒然としていたのが、もう友の名前すら話題に上らなくなった頃のことだ。
封筒の中には写真が1枚だけ入っており、何処かの夕日に染まるビーチで海を背にした友が満面の笑みで写っていた。
ピースなんかしちゃって、予想に反して元気そうな姿を見て安心した。
心配かけやがってと文句の一つでも返したかったが、友の住所はどこにも書いていなかった。

それから不定期ではあるが、忘れた頃に友から写真が送られてくるようになった。
海外を渡り歩いているのか、見たこともない景色ばかりが写っていた。
雪山の頂上にいる時もあれば海の中でダイビング中に撮ったと思われるもの、テントを張った雪原でオーロラを指差してこっちを見て笑ってるものや地平線が見えるほどにだだっ広い花畑の中ではしゃぎ回ってる写真なんかもあった。
不思議なのは写真が届くたびに画像で検索をかけても何もヒットしない事だ。
お前は今どこにいるんだ……?


いなくなる前の友は仕事や金の悩み等が原因で常に疲れ果てた顔をしていた。慰めになればとしょっちゅう飯に連れて行ったり、自分の職場に来ないかと誘ってみたりしていたが、それらは友にとっては悩みの解決にはならなかったようだ。常にため息をつき暗く消え入りそうな声でボソボソと泣き言を言う姿を見て今にもいなくなってしまいそうだと思っていた矢先–––––––––

本当にいなくなってしまった。

近くにいるうちにもっと色んな方法で友を助けられたんじゃないかと何度も思ったし、写真が届くようになって数年経った今になってもそれを考える。だが写真に写る友の疲れや毒気が抜け切った子供の時のような無垢な笑顔を見ると、今が一番幸せならそれでいいかと思うのと同時にその側に自分がいないのが少し寂しかった。

写真は急に届かなくなる日が来るのかもしれないし、自分が死んだ後もずっと届き続けるのかもしれない。もしかしたら地球じゃない所にいるのかもしれない友が心から満足してくれるならそれにとことん付き合おうじゃないか。よく分からない遊園地のような場所で見たこともない着ぐるみのキャラクターと並んで笑う友の顔を指で小突いてグラスに入った酒を飲み干した。

6/1/2024, 12:51:38 AM