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夜の海には、死にたい人を引き摺り込む魔物がいる。
どこかでそんな話を聞いた事がある。
いつも明るかった彼女は先日海に消えた。
私は彼女が好きだった。明るい性格の奥に潜むその死にたがりをも愛していた。
彼女が自分で生を断つ事を選んだのだ。魔物なんかに彼女が奪われた訳ではない。私は彼女の選択を肯定したかった。それが私の彼女への友情だった。
そんな事を思いながら、私の足は彼女が溶けた海へと自然に向かっていた。
魔物とは水面に揺れる二つ目の月か、この足の冷たさか。彼女はこの海で私を思い出してくれていただろうか。
彼女と生きていたかった。ただ同じ走馬灯を見れたらよかった。
時は夜、この海は私の人生で一番魅力的だった。

8/24/2024, 2:03:34 AM