あると

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『逆さま』

 天井に足がついている。

 まさかこんな体験をする日が来るなんて、思ってもいなかった。
 重力に従ってポニーテールが逆だっている。
 スカートじゃなくて良かった、なんて場違いなことを考えてしまうのは、この状況にどうも現実感がないからだろう。

 腕時計を外すと、それは目の前を通過して、私の上に落ちていった。
 
 私だけだ。

 私だけが、重力に逆らっている。

 身につけたものは落ちるし、髪の毛も床を向いている。
 でも、私の体だけは、この部屋で唯一、天井を地と扱っていた。

 不思議なこと。

 けれどもとても単純なことだ。

 私はなぜだか、『逆さま』になったのだ。

12/6/2024, 10:12:40 AM