片桐椿

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 視界の端で何かが揺れた気がした。懐かしい柔らかい匂いと、慣れたあの身長。心の奥に秘めた影が過った。
 風に誘われて振り向く。そこには誰もおらず、通り抜けてきた河川敷があるだけだった。芒が川を眺めている。ただのよくある秋の風景だ。それでも私はどうしようもなく郷愁を煽られた。その影が、もう会うことのない人に見えてしまったから。今日がまるであの秋の日のようだったから思い出してしまったのだ。私はもう一度その芒を見やって、また歩き出した。

/幽霊の正体見たり枯れ尾花

お題:すすき

11/11/2023, 6:15:40 AM