憂一

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『君と出逢って』

君と出逢ってから17年が経ちました。
桜の木が緑に染まり始める頃、河川敷で君と初めて会ったことを、昨日のことのように覚えています。
女学校の生徒だった君は、授業を抜け出して土手の草原に寝転んでいましたね。
「ねえ、コペルニクスみたいな発見がしたいなんて、大きすぎる欲かしら?」と声をかけられた時は唖然としてしまいましたが、学者擬きだった私にとってこれほど興味を誘われる文句もなかったので、ともに世界の未知と既知について語り合うことにしたのでした。

さて、君が亡くなってから13年が経ちました。
私は今でも正真の学者にはなれず、相変わらず擬きを続けています。君のいない世界は、退屈になるかと思いましたが、この世界を知ることに飽きることは、まだまだ先のことになりそうです。
それなので、今日は暫しの別れの挨拶をしようと思って、この墓前に来ました。
私はしばらく、外遊しようと思います。
君とこうして語り合う時間が無くなってしまうのは寂しいですが、あの世での話の種がもっとあった方が楽しいだろうと思うので、なんとか我慢します。だから、君も少し休んでいてください。

それでは、また後ほど。

5/6/2024, 12:14:19 AM