KakeKake

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『お題:鏡』

 僕には鏡のような友人がいた。
 友人と呼んで良いものか、少々疑問には思っているのだけど。
 彼は他人のはずなのに、僕に瓜二つの顔立ちで妙に親近感を覚え、毎日会っては何気ない話をするのがお決まりになっていた。
 ただ、今日はダメだった。
 少しだけ話す内容を間違えてしまったのだ。
「今日は暑いね」
 僕が話題を振る。
 すると彼は、
「今日は暑いね」
 と、共感の意を言葉にしてくれる。

「最近は全然雨とか降らないね」
「そうだね。最近は全然雨とか降らないね」
「隣のクラスの菅沼くん、期末試験の現代文、満点だったらしいね」
「そうだね。隣のクラスの菅沼くん、期末試験の現代文、満点だったらしいね」
「それにしても、自分に取り柄がないと生きるのがつらいよね」
「そうだね。自分に取り柄がないと生きるのがつらいよね」
「何のために生きてるのかわからなくなるよね」
「そうだね。何のために生きてるのかわからなくなるよね」
「いっそのこと、死んじゃえばいいのかな」
「そうだね。いっそのこと死んじゃえばいいよ」
「……?」

 お前、誰だ?

8/19/2024, 9:03:09 AM