海月 時

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「貴方に出会えてよかった。」
俺が何と言おうと、返事は来ない。あぁ、狂おしい程に愛おしい。

「悪魔だ。」
殺した相手に言われた言葉だ。悪魔だなんて。俺は神に仕える身だぞ。神は人間にお怒りだ。私利私欲のために相手を蹴落とす姿勢、差別をする物言い、全てに対して、呆れておられる。だから、俺が神に代わり人間に鉄槌を下す。

この街では、十歳になったら教会にお祈りをしに行く風習があった。俺も十歳の時に行った。そこで俺は神に心を奪われた。周りから見たらただの石像。しかし、俺の目には美しく清い姿に見えた。そして俺は、神に仕えるために産まれてきたのだと、理解した。どうすれば神は喜ぶだろうか、俺は考えた。そして、一つの案に辿り着いた。この世で一番不要なもの【人間】を無くせばいいのだ。

「君が噂の人殺しくん?」
目の前の男が聞く。俺は頷く。何なんだコイツ?普通もっと慌てるだろ。もしかすると、俺よりも強いのか?
「僕は今から君に殺されるだろう。その前に一つ聞いてくれるか?」
「恨み言か?」
「神を買い被るな。神は戦争の止まないこの世界を、楽しんでいるぞ。」
その言葉を残し、男は死んだ。

あの男の言葉が頭から離れない。俺が仕えてきた神は、俺が信じてきた神は、腹黒いものなのか?
「貴方がいたから、俺は正しい道を歩けました。」
しかし本当は、貴方がいたから俺の人生は狂ったのか?神からの答えはない。きっと、俺が信じた神はもういない。
「神が死ぬ時、俺もまた死ぬ事ができる。」
そして俺は、血塗られた手で自分の喉を掻っ切った。

6/20/2024, 2:53:06 PM