もしも未来を見れるなら
「店番」
何処にでもある駅前の商店街に、おばちゃんの店はあった。そこが1号店だから結構古い店だ一階がテナントで上はアパート7年くらい前からそんな感じで、おばちゃんは店番兼務の管理人だ。以前は内外兼務で飛び回っていたおばちゃんも、今はわりと暇な商店街で店番だ。
過去には三泊四日くらいで行きたい気がするが
「見たい未来」となると・・・あるかねぇと、おばちゃんはスマホから目を上げ店の外を眺めた。
猫は客用の長椅子を占領し眠っていた。
閉店までのひととき。
忙しいのは午前中と帰宅ラッシュの時間帯だけ後は呑気な店だ。繁忙期は春先の季節商売それもコロナで大打撃だ、おばちゃんの店も何店舗か閉店の憂き目にあい、商店街も歯抜けになっていたが、最近ようやくもとの賑わいをみせるようになっていた。それでもおばちゃんは相変わらず呑気で店番をしながら通りを眺めている。
呑気なおばちゃんは暇そうな若僧を見つける。
漫画「おじゃまんが山田くん」の山田くんの様な風貌の若僧は今起きましたというような顔にボサボサ頭を掻きながら、きっと世界がその色で見えているのではと思われるような灰色のスエットに素足にサンダルで店の前を歩いて行く
平日の午後2時過ぎ、1番店が暇な時間帯に前を通り過ぎる暇な若僧。
暇同士のニアミス。
「あの子また来てるよ、無職かねぇ…こんな時間に、あんな格好で」
おばちゃんは独り言を言いながら勝手に名付けた山田くんを見つめた。
すると山田くんもこっちに目をやった。
「暇そうな店だなぁ…」とでも独り言を言っているのか。
目が合う 暇そうな人二人。
そうだ、もしも未来を見れるなら。
半年か1年くらい未来に行って
山田くんがどうしているか見たいわ。
おばちゃんは、そう思った。
もし、まだ同じようなら声をかけてやろうか。
時間を無駄にするな!
時間泥棒のような日々
それは、もっと先にいくらでも出来るから。
先ずね
暇そうな人にも色々あることを学んで。
自分は今どの時なのか?
人生の大切な時間を時間泥棒に盗まれないようにねって。
冬眠が必要な雪深い場所で生きているのに死んでいるような時を過ごしていると狭苦しくなってしまうけど、街に出ればみんなそれぞれの時間を生きていることに気づくもの。
火曜は飲食店は休み
水曜日は水商売は休み
土日祝日に休む客商売は無し
だから平日の休み
暇な日も時間も
人によりけり
暇な理由も人によりけり
それに気づく事はとても大切
山田くんとおばちゃんは暇だけど暇な理由は同じじゃないきっと。
おばちゃんは山田くんの未来が狭い灰色の冬眠中のクマが見る世界じゃないことを祈ってる。
おばちゃんは、山田くんと名付けた灰色のスエット姿の青年と目が合って微笑んだ。
平日の午後2時過ぎ。
2024年4月19日
心幸
4/19/2024, 6:18:53 PM