イカワさん

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「可愛いね。たっくん。」

「なんだよ、う、うるせぇな。てか、もうその呼び方辞めてくんねぇ?タクって呼べばいいだろ。」

そんな事言ってるけど僕知ってるよ?

君、恥ずかしくなると耳が真っかっかになっちゃうんだよね。

まあ、そういうところも可愛いんだけどね。

「…とにかく!行ってきます!!」

「え、どこに行くんだい?」

「と、ともだちと…ボーリング!」

本当に分かりやすいんだから。嘘だね。

「へぇ、ボーリングか。誰と行くの?」

「そんなんお前に関係ないだろ!もういいな?行ってくる。」

ドアがガチャリと閉められる。

「…ふぅん…そっか。」

本当はどこに行ってるのかな〜?GPSの行方を確認する。

家の近くのコンビニを横切って、左に曲がる。

それから真っすぐ進んで3番目の曲がり角で右折。

あ、止まった。信号かな? 

ふふふ、ちゃんと待つんだね。偉い偉い。

また進みだした。

真っ直ぐ、次に右折。真っ直ぐ…真っ直ぐ進んでーーー。

「着いた…かな。」

ここはーーー

「へぇ…」

同級生の家かな…?こんなに仲がいい子がいたのか。

「でも、"ともだち"ではないんだもんね?」

恋人か?それとも脅されてるのか?それとも他に何か…?

まあ…とにかく隠し事をしているのはわかったね。



ここ最近、帰りが遅い。 

"防犯"のために盗聴器を追加しよう。

今日も帰りが遅い。

まず位置を確認。

「…あの家だね。」

そして音。

「性別は男。口振り…意外と親しい仲なんだね。」

機械に耳を密着させどんな音も逃さない。

少し高めの物を買って良かった!ノイズが少ないね。

『今日も来てくれてありがとう。』

『いや、俺が来たかっただけだし。…逆に迷惑じゃないか…?俺…。』

『むしろ来てくれて感謝だよ!親共働きで淋しいからさ』 

『…ほんとお前は良いやつだな』

『ありがとう。それに学校じゃあこんな事出来ないからね』

『あっチョット。せめてベッドまで待てって!』

『え〜いいじゃん。ソファあるし?』


肌の粟立ちを感じた。吐き気がする。

トイレに駆け込む。

全てを吐ききらなければ、憎悪、嫌悪、絶望。

空になるまで嗚咽を繰り返した。

黒く渦巻いた感情の中に、僅かに高揚も含まれていた。

「…ゔっゴホッ、ハァハァッ…はは。

男いけちゃうんだね。」

興奮に身を捩らせる。

「ははっ、しかもネコちゃんか〜。」

「間違ってなかったよ。諦めなくて良かったよ!あぁ、息子よ!パパは嬉しいぞ!こんな立派に育ったちゃって!」

「……でも…ちょいとお人好しが過ぎるんじゃないかな。

馬の骨に体差し出してさ。

ねぇ…ダメじゃないか。汚れてしまうよ。

ああ、パパが綺麗にしてあげるからね。

愛しい息子よ。」

5/31/2025, 9:19:52 AM