月に願いを
銀歌と共に海辺を歩く。
波が俺と銀歌の足元に、寄っては引いてく。
裸足で歩くから、波の冷たさが丁度いい。
長い長い浜辺を共に歩く。
今日は満月だ。
銀歌の表情は月明かりに照らされて、より美しさを際立たせていた。
俺はその美しさに見惚れていた。
銀歌は俺の視線に気がついたのか、俺にふわりと笑いかけた。
俺は恥ずかしくなり、外方を向いた。
そんな俺が面白いのか、銀歌は俺の頭を撫でた。
「何だよ…。」
『可愛いから。』
「かわいくねーし…。」
そんな会話が続く。
暫く沈黙が続くと、銀歌は俺の目を見て言う。
『ねぇ…傑さん。《“月に願いを”すると叶う》
だから二人でお願いしよ?』
銀歌は手を合わせ、願い事をする。
俺も続けて願い事をする。
《永く…出来るだけ永く一緒にいられますように》
俺は願い事を終えると、銀歌の方を向く。
銀歌はまだ願っているみたいだ。
その横顔が美しかった。
銀歌は願い事を終えると、ゆっくり目を開けた。
その瞳には、波の煌めきが映っていた。
銀歌は何を願っていたのかは、分からない。
俺はずっと銀歌の隣に傍に居られるのならば、この身がどうなっても構わない。
だから、銀歌の“病気”が治りますように…。
5/26/2024, 11:26:27 AM