白糸馨月

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お題『カーテン』

 平穏に暮らしていたら、誰かからの視線を感じた。
 カーテン越しに外を見ると、私はとっさに魔力をこめながら手を後ろに向ける。いつも使っているガラスの万年筆が宙に浮いて私の手に吸い付き、杖の形状に変化した。
 カーテンに魔法をかけているから、人間からは姿は見えないはずだ。だが、私に殺気を送るということは、私と同類か。要するに追っ手が来たのだ。
 私は、マンションの部屋から出ると、廊下で男とすれ違った。このマンションはオートロックだが、私と目の前の男のような『魔法使い』には意味をなさない。魔法さえ使えばガラス板など簡単にすり抜けることができるからだ。
「魔法警察か……」
「大人しくしろ。さすれば、罪は軽くなると王はおっしゃっている」
「こんなところまで追ってきても、私が無実であることに変わりはない」
「貴様がそういう態度なら」
 言うなり魔法警察は、黒光りする杖から稲妻を出した。正直、余裕でかわせるレベルだ。だが、ここは我々と姿形は同じとはいえ、魔法を使えない者にとっては命取りになる攻撃だ。
「近所迷惑、だな」
 私は姿を消す魔法を使い、宙に浮く。殺気も消して知覚させないようにする。
 警察は杖片手にきょろきょろあたりを見回している。私はここぞとばかりに彼の周りに円を描き、転移魔法をお見舞いする。
 すると、彼の周りに異空間ができ、次の瞬間落とし穴に落ちるかのように叫びながらそこに落ちていった。異空間につながる穴を閉じた後、私は地に足をついて、姿を現す。
「よし、引っ越すか」
 私は部屋に戻るとパソコンを開き、賃貸情報サイトを開いた。

10/12/2024, 1:29:58 AM