フグ田ナマガツオ

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言葉にできない想いならいくらでもあるけれど、それを伝えるる勇気はいつも足りない。
伝えられないまま10年たった。
彼は高校の生徒会長になり、立派に壇上で司会を務めている。
それに比べて私ときたら、体育館のすぐ隣に設置された生徒指導室で今日も説教を受けている。

「お前その髪、その髪何色だ?何色って言うんだその髪は」

「オックスブラッドです」

「せめて分かる色にしてくれよ。怒りづらい」

「好都合ですが」

「だろうけど。お前、なんでまた2年になって急に染め出したんだよ。1年までお前真面目だっただろ。成績も学年2位だったし」

「成績と髪色に関係が?」

「賢いやつはだいたい、破る価値のないルールは守るもんだよ。悪業見せびらかして注目される以外に、自分の存在の示し方を知ってるもんなんだよ。お前もそうだっただろ。陸上でも県でトップ取ってたし、友達も多いし、わざわざお前が髪を染めてくる理由ってなんだ?マジで説教とかじゃなく教えてくれ」

先生は掌を上に向けて、こちらに問うてくる。
毎回付き合わせているのも申し訳ないし、理由くらいは教えてあげようかな、という気分になった。

「久保先生、女子高生がオシャレをする理由なんて一つでしょう。好きな人にこちらを振り向いてほしい。それだけです」

「誰?」

「言うわけないじゃないですか」

「いいから答えろ。うちのクラス?」

「まぁ……」

久保先生は椅子をくるくると回して、逡巡しているようだった。

「じゃあ吉野、お前、来週の文化祭で告白しろ」

「ええ!?」

「髪色オックスブラッドのやつがこの程度で驚くな。要するにお前の恋愛が成就すれば、素行は落ち着くってことだよな」

「まあ、そうなりますが」

「ならさっさと決着つけろ。」

4/12/2023, 9:41:34 AM