朝日がカーテンの下から溢れ、それが自分の顔に当たる。
眩しい…と感じると体勢を横にするとコツンと何かに触れる。
その瞬間ふと温もりが伝わる。
「ん……」
ゆっくりと目を開けるとそこにはパッチリと目が開いた彼がこちらを黙って見ていた。
「うわぁぁ!」
「な、なんだよ!!」
「…びっくりした、そっか」
「彩芽、おはよう?」
彼が笑顔を見せるとすぐに彼女が笑顔になる。
彼がいる。ここに…
昨日彼は私にどれだけ愛してるかを伝えてくれた。
その全てを凄く愛おしそうに、大切にしてくれた。
「おはよ…大好きな朔」
「俺も愛してるよ」
「このままずっとこうしてたい…」
「ん?」
「朔とずっとこうやってたいなって」
「彩芽、それはだめだよ?仕事は好き嫌いじゃないんだから」
「えー…」
「仕事は嫌い?」
そんな問いを改まって言われた事などなかった。
答えに困り何も言えなくなり少し考え込むような顔をクスッと笑いながら見つめている。
「ま、好きだって言う人なんか少ないだろうけどさ」
「朔は?」
「俺?どっちでもないかな、でも夢の為なら何でも頑張れるって昨日俺思ったんだ」
「嫌いな仕事じゃなくても好きな仕事じゃなくても、俺昨日お前と一緒になってその夢叶えれると思った」
「彩芽と家族になって幸せに暮らすっていう夢」
「…朔私もう」
「まだダメだよ?」
彼が笑顔のまま口に優しく触れるとベッドから起き上がる。
「夢があるって思ったら頑張れるだろ?」
「ちぇっ…」
「会社まで送ってあげるからさ」
彼女が残念そうな顔でそのまま立ち上がるとキッチンへと向かう。
その姿を優しい目で見つめながら少し口角を上げる。
「お前はずっと好きな人だよ」
episode『好きになれない 嫌いになれない』
4/29/2025, 3:07:40 PM