「お盆も開けて、8月ももう終わりね」と小夜は言った。
「小学生の頃はこの時期が1番嫌だったなあ。夏休みが終わって、いよいよ学校が始まるぞって思い始めるの」
小夜は縁側に横になって、風鈴をじっと眺めていた。からん、からん。
「確かに嫌だったわ。終わってない宿題もやらないといけないし。そして、それはだいたい自由研究やら新聞作りやらのめんどくさいやつ」と加奈子は言った。
「わかる。計算ドリルとかは答え移して早めに終わらせるの。でも、自由研究とかの一苦労必要そうなやつはあとにとって置くのよね。私だけじゃなかったのね」
縁側からは放置された雑草が茂っているのが見える。垣根のそばにあるはずの小さな池も今は見えない。
セミの鳴き声ががらんどうの居間にやけに大きく反響する。
「結局、今年も夏らしいこと出来なかったな。仕事でそれどころじゃなかったし。海とか川とか行きたかったな」と小夜は言った。
「私も。でも、最近の残暑なら数年前の真夏ぐらい暑いし、9月いっぱいは海やら川やらは行けるんじゃないの?」
「そうかなあ」
小夜はそう言うと、少し曇った顔をしてひとしきり悩み、何か考えが浮かんだように顔を輝かせた。
「それじゃあ、9月に一緒に行こうよ。海でも川でもプールでも」
「いいわね。今年は珍しく2人とも日本にいるし」
「そうそう。決まりね」
8/17/2025, 4:54:50 PM