「女は花で、男は花瓶である。」
「...え、いきなり何?」
「いやっ、ネットで出てきたんだよ!」
一丁前にカッコつけたかと思えば、すぐにメッキの剥がれた彼、佐々木裕人は私が頼んだコーヒーを片手に必死に言葉を紡ぐ。
「ほら、その、どんな事があっても男がね?そりゃあもう綺麗な女性を引き立てるっていう...えっと...。」
「ふうん。なるほど。」
影響されやすい裕人のことだ、かっこいいと思ってそのフレーズを使いたくなったのだろう。私としてはそんなラッピングされた言葉よりも今は別のものが欲しいのだけれど。
「うう...。」
「女性は花ね。...裕人、花って綺麗だと思う?」
「え?そりゃあもちろん。なに?そのくらいの美的センスは兼ね備えているつもりだけど。」
「たくさんの花がいる中で、私はどんな花に見える?」
静寂。ただお互いがお互いの瞳を見つめる。時計の針が動く音、蛇口から漏れる一雫。彼が息を飲んで口を開く。
「めっちゃめちゃ綺麗!可愛い!もう世界一、いや宇宙一!!最高!」
彼のラッピングされていない、馬鹿正直な言葉が音となり、耳に届く。
「ふっ、んふふ...!じゃあ、コーヒー無いと枯れちゃうからいただける?」
「あ!!ごめん!冷めちゃったよね。」
「いいの、いいの。ありがとうね。」
生ぬるいコーヒーを体内に流しながら、彼に近づく。
「えっ、え?どしたの?」
「別に?私から見れば宇宙一の花は目の前にあるなあって。」
「......?え!?どこ?」
互いに、ただ一輪の花を朽ちるまで愛を注いで、互いに支え引き立て合う。
2025/02/24 #一輪の花
2/24/2025, 10:49:38 AM