冬月は、鮎川係長の住む部屋で
今日も図書館で借りた本を読んでいた。
難攻不落だった鮎川係長が心のドアを少し開いてからは、彼の部屋で本を読み、
お互いが読んだ本の感想を言い合うのが
二人の休日のルーティーンになっている。
しかし今日の冬月は、
少し本を読む集中力に欠けていた。
どうしても仕事について懸念点が拭いきれない。
「鮎川係長、在庫確認のソフトウェア導入の件なんですが」
「会社以外で仕事の話はしないよ。」
ぴしゃりと言われた。
冬月は途端に口ごもる。
「いや、でも気になって、ご意見が聞きたくて」
「冬月、俺たちの仕事は外に漏れちゃいけない仕事なんだ。」
「でも、ここは私と係長しかいませんし」
鮎川は本を読む姿勢を崩さず、
本から目を離さないままこう諭した。
「ルールはルールだ。俺たち総務の仕事は、あらゆる状況を想定しないといけない。会社以外で仕事の話はしないっていうのが一番簡単だろ」
冬月は、鮎川に向けていた身体を元に戻し、
少し下を向いた。
どうしてもモヤモヤが消えない。
新ソフトウェアはたしかに優秀だが、
何かが引っかかる。
鮎川は、冬月の様子を横目でチラチラと観察していた。
4/24/2026, 2:22:53 PM