古武 瀏

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「__ベガと、アルタイルだよ」
「__ユナは夢がないなぁ、もう。そんな堅苦しい呼び方じゃなくて、彦星様と、織姫様だよ」

 私は、事実を言っているだけなのに、いとこにそれを否定される。
 夢がないのは、どっちの方だ。

「…どっからどうみても、ただの一等星なんだけどな。昔の人はどうやってその逸話を作ったんだか」
「まあまあ、そんなきつく言わないの」

 私の夢の無さを肯定するいとこは私を慰める仕草をする。


「…また、会えないんでしょ」

 それは、ベガとアルタイルの逸話の登場人物に言ったのではない。いとこと私に、言ったのだ。
 それは毎年のことなので、語尾に疑問符がつくことはない。

「…うん。ごめん」
「……不思議。七夕しか会えないなんてさ」
「………彦星様と、織姫様みたいだね」
「…………ベガとアルタイルだってば」

 沈黙が増えていく。
 やがて、沈黙はその場を支配した。

 それよりも、私が言った、星の呼び方を完全に無視して、逸話の呼び方をするいとこに、悔しさを覚える。
 きっと、涙がでているのも、そのせいだ。

7/7/2023, 11:43:26 AM