弥梓

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『耳を澄ますと』

※百合


朝は嫌いだった。
気持ちよく寝ているのに、目覚まし時計の音で強制的に目を覚まさなきゃいけないのも、暖かい布団から出なきゃいけないのも、食欲もないのに朝ごはんを胃に詰め込むのもつらすぎて。
でも、あなたと一緒に暮らすようになってからは、リズミカルに包丁がまな板を叩く音で目が覚める。
耳を澄ますと、歌が聞こえてくる。流行りの歌だったり、懐かしい歌だったり、時にはあなたが適当に作った即興の歌が聞こえてくることもある。
それを聞くと、早く起きて手伝わなきゃ、と自然と目が覚めて、体を起こすのも苦じゃなくなった。
私が朝が苦手で料理もそう好きではないことを知っているあの子から、料理は好きでやってるから出来上がるまで寝てていいよ、と言われたこともあるけど、あの子の隣に立って料理をするのは好きだから、足手纏いかもと思いつつも手伝わせてもらっている。
寝室を出ると、扉を開けた音を聞いたあなたがキッチンから
「おはよう」
と声をかけてくれる。
それだけで私はあんなに大嫌いだった朝が今では大好きだ。

5/5/2026, 9:32:12 AM