浜辺 渚

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当時、僕は野鳥観察に熱心だった。直子とのデートでも、自然公園に行っては、よく一人で野鳥観察に夢中になっていた。

「鳥のどこがそんなにいいのかしら」
「鳥が良いと言うよりは、バードウオッチングという行為に惹かれているんだよ。手に届かないものを必死に追いかけ回すって所が気に入っている」
「そう?なんでもいいんだけど、今はデートの最中で、私はあなたの彼女であるということは忘れないでね」
「もちろん」

その日の暮れには、近くの川に行き、山に沈む太陽を2人で眺めていた。紙芝居の夕暮れのように、それはハッキリとした輪郭を持っていた。陽光を浴びた彼女の顔はそこはかとない侘しさを秘めていた。

3/21/2025, 3:22:10 PM