幻覚

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『ミッドナイト』

夜行性の恋人は夜が更けてくると機嫌が良くなる。対して私はと言えばもう眠気を覚えている頃合どころかもう布団に入っていてもおかしくない。それでも何となく眠る気になれずに、こうして恋人の隣でソファに沈み込んでいた。傍らの恋人はワイングラスを揺らしているが、自分の呼気に含まれるアルコール臭にすらげんなりしている有様ではそれに付き合う気にはなれなかった。

自分の傍らでソファに沈み込んでいる恋人を見る。随分と眠たげにしているが、まだベッドに行くつもりは無いらしい。普段は実に健康的な生活の男だが、このところ度々会食が入っていたのが随分堪えているらしい。お疲れの恋人を癒してやるのはやぶさかではないのでこうして隣でワインを飲んでいるが、正直なところそろそろ眠気が来ていた。飲み干したグラスを置き、その手で恋人の顎を捕らえる。見返してきた目にあまりにも力が無くて笑ってしまう。軽く口付けてやるとじわじわとその目が見開かれ、次いで困ったように揺れた。「今はあまり付き合えないぞ」などと宣うので苦笑してしまう。

「余程眠いと見えるな。或いは卿の思う私はそんなにも鬼畜なのか?」

担がれて運ばれたくなければベッドへ行け、と促すと渋々動き始めた。横になった途端に眠りに落ちそうな男に再びキスを落とす。恋人はこちらに手を伸ばそうとする様子を見せたが、途中で力尽きてしまった。

1/26/2024, 2:57:19 PM