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ひなまつり


いつしかその日は祝われなくなって、雛人形さえ飾られなくなった。
何気ない平日と同じように混ざって、その日であることを忘れるくらいには関心もなくなっていたけれど。
珍しく恋人がケーキを買って帰ってきた。互いの誕生日ではないし、記念日にしては身に覚えがなさすぎる。
「なんでケーキ?」
素直にそう聞けば、恋人はあっさりと簡単に答えを教えてくれた。
「ひなまつりだから。まぁ、ケーキで祝うもんじゃないと思うけど、今日は女の子が主役の日だからね」
ああ、ひなまつりか、と今日が何の日か思い出して、自然と口角が上がる。たしかにケーキで祝うものではないけれど、ひなまつりだからとこうして買ってきてくれるのは素直に嬉しかった。
買ってきたケーキは一切れで、結局二人で分け合って食べた。何気ない一日だったけれど、少しだけ特別になったのは秘密だ。

3/3/2023, 3:00:27 PM