いぐあな

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300字小説

置き土産

 うちの会社でも窓際の窓際、辺境惑星の営業所に俺は飛ばされた。定年までまともな星系国家の支社には戻れないと言われる伝説の左遷だ。
「……まあ、腐っていても仕方ない」
 休日の夜。寂れた宇宙港周辺の街を歩いてみる。異星人ばかりが彷徨く飲み屋街で一軒のバーに入る。
 ビールをグラスで頼み、カウンターに座る。異星人のピアニストが鍵盤を鳴らす、洒落た店だ。
「この曲は……」
 ジャズの名曲『枯葉』。驚く俺にマスターが笑む。
「地球人の方ですか? 前にいらしていた常連さんが彼に教えたのです」
 他にも様々な地球人が様々な曲を残していったらしい。
 これは一つ楽しみが出来た。俺は何を教えようか。
 曲に身を任せ、ゆっくりとグラスを傾けた。

お題「枯葉」

2/19/2024, 11:45:54 AM