無音

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【260,お題:快晴】

快斗、という名前を自分でもそれなりに気に入っていた。

俺が生まれた日、ずっと嵐だった空が嘘のように晴れ渡り美しい快晴が見えたそうだ
その"快晴"からとって、晴れ渡る大空のような澄んだ心の持ち主になってくれ、ということで"快斗"

俺が見る空はいつも晴れ、雨を見たことは数えるほどしかなかった
周りからは、生粋の晴れ男などとよくもてはやされた
自分でも、俺には雨を退ける何かがあるんだと少し思っていた

ある時超大型の台風がきて、会社も学校も休みになるような大嵐になったことがある
流石に台風は退けられなかったらしく、俺は無心でガラスに打ち付ける雨粒を見ていた

その時に見た、荒れ狂う灰色の世界が見とれるほどに美しかったことを覚えている
時折黒雲を切り裂く稲妻、木の葉や小石を巻き上げて唸る暴風

晴れた青空を見続けてきた俺にとってその光景は、世界の崩壊のようで
昼でも夜のように暗いその光景に目を奪われ続けた

それから俺は晴れより雨が好きだ、快晴だけど俺は雷雨がいい

4/13/2024, 2:36:38 PM