大狗 福徠

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春風とともに
微睡みに浸る身体を引き摺り起こす。
あたりはすでに春の陽気で満たされていた。
気分を害したリスみたいな顔をした君が隣でもぞもぞしている。
上から布団をかけてやって、朝食の準備を始めた。
適当にスクランブルエッグなんかを作って置いておく。
桜が爛漫としている。
眩しくて仕方がない。
カーテンを閉めて君を起こしに行く。
まだ本調子ではないようだ。
のそのそとご飯を食べて、大きな欠伸と共に食べ終わる。
外では春風が吹いている。
桜の枝が揺れて花が落ちていく。
風流だなんて思いはしない。
それでも、君が「きれい」と一言寝惚け眼で零したから。
春風なんかもいいなと思った。

3/30/2025, 4:36:55 PM