切っ掛けはさて何だっただろうか。
記憶力は割りと良い方だと自負しているが、流石に二十年も前のこととなると曖昧だ。
朝からニュースで盛んに報じられていたのを見たのが先か。
はたまた、学校の廊下で地学部からの星空観測会の案内を見たのが先だったか。
いずれにせよ。星空と聞いて思い出すのはやはり、深夜に極大を迎えた二十年前のしし座流星群の夜だろう。
「日本で、夜に、肉眼で。沢山の流れ星を見られる、またとない大チャンス!」
その触れ込みの通り、まるでアニメの背景か。もしくはエフェクト加工を施した動画のようにきらりと瞬き、光の筋となって消えたものを空に見付けたときの感動は今も忘れられない。
それが間を置かずして次から次へと繰り返すのだから、まさに千載一遇、夢のような夜だった。
「次に好条件が揃うときは……私はもうおばあさんだね」
後日、流星群の様子を伝えるニュースを見て、余韻に浸りながら母がぽつりと呟いていた。
二十年前に見たときは、私と母と、祖母の三人だった。
祖母は昨年に亡くなってしまい、もう居ない。
そのことにはまだ慣れなくて、意識してしまうと少し寂しい。
母が待つ次の大出現の頃、私は一緒に居られるだろうか。
昨年から家の中がバタついて、先のことは分からない。
それでももし叶うのならば、あの時のようにまた星を見たい。
夜中に目覚ましをかけて、示し合わせ。
眠い目をこすり、空を見上げて流れ星を待つ。
そんな思い出の夜を、もう一度。
まだ見ぬ未来の星に、願うとしよう。
(2024/04/05 title:021 星空の下で)
4/6/2024, 9:33:30 AM