預かったコインを握りしめて、ぼくたちは街へ走った。
いつものように森で遊んでいると、疲れ果て、ボロボロになった旅人に出くわした。飲まず食わずで1週間ほど道に迷っていたらしい。ぼくたちが差し出した水や食べ物を口にすると、旅人は少し元気がでたようだった。そして、1枚のコインをポケットから出し、体力回復に必要な薬草を街にいって買ってきてほしい、とぼくたちに言った。
ぼくたちは、街に着くと、薬草を売っている屋台を探した。この街には本当にたくさんの屋台があった。薬草を取り扱っているところはいくつかあったが、旅人に頼まれた薬草を売っているところはなかった。ぼくたちは、がっかりして街をあとにした。
森に近づくにつれ、なんだか様子がおかしいことに気づいた。握りしめていたコインが熱くなってきているのだ。ずっと手の中にあったせいかと思っていたが、どうやら違うらしい。手を広げ、コインを見ると、それはぐにゃぐにゃと形を変え、みるみるうちに美しい鳩になった。鳩は空高く舞いあがり、森の奥のほうへ飛んでいってしまった。
一瞬の出来事に、ぼくたちはあっけにとられ、しばらく立ち尽くした。薬草もコインもない。旅人になんて伝えよう…。
ぼくたちは、トボトボと足取り重く、旅人のいる場所へ向かって歩いた。
しかし、旅人はいなかった。
近くを探してみたが、どこにもいなかった。不思議なことに、そこに旅人がいた形跡が全くなかったのだった。
ぼくたちは、首をかしげた。
確かに会話をし、水などもあげた。
確かにコインも預かったのだ。
でもそのコインは、鳩になってしまったのだ。
もうなんだか分からなくなって、泣き出しそうになった時、ぼくたちの目の前に、ぱさり、と羽根が落ちてきた。びっくりして見上げると、そこには大きな羽根を広げた天使がぼくたちをみて微笑んでいた。
彼はこう言った。
「ありがとう。きみたちの美しい優しさで、わたしは、また光輝くことができます。」
そして、身体中から黄金の光を放ち、空高く空高く昇っていった。
その美しい姿をぼくたちは、光が見えなくなるまでずっとずっと見送った。
1/29/2026, 6:45:07 AM