「冬は一緒にいましょう」
「急に何?」
妻が唐突によく分からないことを言い出す。
妻とは半年前に結婚したばかりだが、こんな脈絡も無いことを言うのは初めてだった。
「説明してくれるか」
「はい、結婚してからは私が責任を持って家計を預かってまいりました。
締めるべきは締め、緩めるべきは緩め、質の高い生活を維持できていると思います」
「ああ、お前が手綱を握ってくれるおかげで、かなり助かってるよ」
実際俺は金勘定が苦手なので、かなりありがたい。
「それで何かあったのか?」
「はい。これまでは順調に貯蓄もでき、旅行に行くこともできました。
ですが、ついにヤツがやってきました」
「ヤツ?」
「冬将軍です」
「冬将軍…」
思わず言葉を繰り返す。
「ヤツがやってきたことで、暖房代で光熱費が高くなる季節が来てしまいました。
油断すると一気に家計は火の車です」
「なるほど。言いたいことが分かった。節約だな」
「はい。ですが必要以上の節約は厳禁です。
この寒い中、お金をを惜しんで暖房を使わないというのは文字通り自殺行為。
そこで暖房は使うが、二人一緒にいる事で効率よく温まり光熱費を節約する、という方針で行きたいと思います」
「そこで冬は一緒に、という話になるのか」
妻はコクリと頷く。
「分かった。お前がそこまで言うならそうしよう。
他には何かあるか?」
「特に理由がない限り他の部屋に行かず、極力リビングにいること。
こうすることで温める部屋が一つになり、節約になります」
「なるほど。だが寝るときは寝室に行かないのか?」
「リビングに布団を敷いて寝ましょう。寝室を使うと余分に暖房代がかかります」
「それもそうだな」
「ありがとうございます」
俺が納得したことに、妻は満足した様子だ。
「言い忘れていましたが布団は一つです」
「えっ、リビングには2人分敷く広さはあるぞ」
「布団を一緒にする事で、効率よく暖が取れて、しかも幸せになれます。
節約と私の幸せのため、ご協力お願いします。
冬の間はずっと一緒ですからね」
12/19/2023, 9:43:58 AM