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きっと私たちはなにかを取り戻すために歩いているんだよ。

子どものころ、欲しかったおもちゃ、食べたかったお菓子。いつの日か忘れてしまったあのころの夢。
大人になればなんでも手に入るって、信じていた。
はやく大人になりたくてしかたがなかった。
ようやく大人になり、社会にでて働きはじめた。仕事の忙しさにかまけてあの日の誓いもあのころの喜びもすべて忘れていた。

心ない言葉とか、噛み合わなくなっていく歯車とかそういう小さなことが、積み重なっていた。
自分はここにいないほうがいいだとか、そういうネガティブなことばかり考えてしまう。そういう思考になる自分に腹が立つ。だけどそれではなにも解決なんてしないということも経験上よくわかっていた。
「子どものころに戻りたい。あのころのほうがよかった」
会社を辞めた同期がよく言っていたことを思い出す。
そうなのかもしれない。結局、自分は大人になったところでなにも手に入れていない。何者にもなれていない。

ふと窓の外を見た。そこには三日月になりきれていない月が浮かんでいた。
月は好きだ。心がすさんだ夜でも当たり前にあるから。
しばらく眺めて、気づく。
月は本当はずっと丸だ。影ができるから三日月とかに見えるだけで。
今なにも持っていないと思っているだけで、本当はずっと持っているのかもしれない。
そしていつだってなにかを取り戻せるのかもしれない。

とりあえず明日、おもちゃ屋さんに行ってみようかな。

6/23/2024, 12:04:28 PM