"色とりどり"
あの日からずっと、俺の世界はモノクロで冷たい世界だった。
一目見た時、あいつだけ色付いていて不思議に思った。《始まりの音》が聞こえた気がした。それからも同じように色付いて見える奴らが出てきて、その度にまた《始まりの音》が聞こえて、最初聞こえた時は何となくで『面白くなりそうだ』と言ったが、まさか本当にその通りになるとは思わなかった。
同じ色でもその時によって色味が違ったり、時々混ざって違う色になったり、一人でも色んな色になっていくのを間近で見て、そしたら少しずつ周りが色付いていった。
あいつらを通して色んな色を見ていくと、周りに色が足されていってカラフルな世界になっていった。
世界はこんなにもカラフルで綺麗なんだって気付いた。
晴れは嬉しいだけじゃない。全てを包み隠さず見せ、太陽の光が自身を責めて鋭く刺す光になって、心をジリジリと蝕む。
雨は悲しいだけじゃない。恵みの雨となって、膿んだ傷を優しく包み、心を潤してくれる。
同じ場所、同じ天気でも別の色を見せてくれる。
その事を教えてくれた。だけど、なにか足りない気がした。何が足りないのか分からなかった。そんな時、また教えてくれた。足りないのは《俺の色》だと。
それまでよりも色鮮やかになって、俺の世界があの頃のようなカラフルな世界になった。
それでも色はまだまだ沢山あった。どんどんカラフルになっていって、それでも色は人の数だけ増えていく。
新しい色を見つける度、俺に色を教えてくれたあいつらに、口で言うのは恥ずかしいし口で言ったら絶対図に乗るだろうから心の中で言う。
《ありがとう》と。
1/8/2024, 11:27:36 AM