Tanzan!te

Open App

Episode.18 貝殻


毎年小瓶を持って穴場の海に行く。

砂と小さな貝殻を入れる。

小瓶をコルクで蓋をして完成。

浅いところで水にあたってから、家までのんびり帰る。


「お母さんただいま〜」

「おかえり、今年も作ったの?」

「うん、今年も可愛いの作れたよ。」

「ふふ、お父さんきっと喜んでくれるね」


生前、お父さんは海が大好きな人だった。

その海で毎年シェルボトルを作り、棚に飾っていた。

知っている限りでは、お父さんが作ったのは三十五個。

私は今年で二十歳になる。

私が産まれる前から、趣味で作っていたのだそう。

お父さんはそう言っていたけど、本当は違う。


「お母さん、なんでお父さんってシェルボトル作り始め
 たのか知ってる?」

「お父さんね、趣味で始めたって言ってるでしょ?
 あれ嘘なのよ、本当は私を喜ばせたいからだったの。
 本当に可愛い人ね。」

「お父さん…かっこいいね。」


お父さん仕事でいない時、こっそり教えてもらった。


___そして私が十五歳の時、お父さんが急に亡くなった。

仕事で足場から落ちて亡くなったとのこと。

毎日辛くて、お母さんと抱き合って泣いていた。

辛い時はお父さんの作ったシェルボトルを眺めていた。

そこで私は、亡くなったお父さんと悲しむお母さんを
元気付けるため、シェルボトルをお父さんの代わりに
作ることにした。


毎年お父さんがシェルボトルを飾ってた棚に私も飾る。


「お父さん、今年も綺麗にできたよ。
 いつでも待ってるから見に来てね。」

9/5/2023, 11:52:07 AM