せつか

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窓を開けると鋭い鎌のような三日月が見えた。
銀色がかって見えるからだろうか、怜悧な刃先は触れたら切れてしまいそうだ。
眼下には灯りの落ちた街と凪いだ海。
深夜二時。誰もが寝静まる時間。
ただ一人、眠れない男は窓辺に凭れ月を仰ぐ。

「おーい、元気でやってるかい·····?」
空へ向けて呟いた声を、月だけが聞いていた。

◆◆◆

甲板から見上げた月は銀色のスプーンに見えた。
揺れる波に船の灯りが反射している。
グラスの氷が一つ、カランと音を立てて溶けた。
深夜二時。見張りの自分以外、仲間達はもう寝ている。思いを馳せるには好都合だ。

「アンタはちゃんと、眠れてる·····?」
空へ向けて呟いた声を、月だけが聞いていた。

◆◆◆

互いの声は遠く離れて届く筈もない。
けれど。
たった一人凭れた窓辺で。
寄りかかった甲板で。

確かに君の、気配を感じた。


END


「君と見上げる月🌙」

9/14/2025, 3:51:57 PM