私から見て、兄は器用な人だった。
普段は虚弱で床に伏せりながら、数字に没頭する変人なのに、
公の場では、上品で立場を弁える怜悧な長子として振る舞う。
野心は無いが隙なく、相応に立ち振る舞う、兄の様は完璧に等しい。
そして、その様は兄の努力の賜物によるものだった。
その様を見たからこそ、私は努力した。
全てに於いて、兄のように、この家に相応しく理想的で在るために。
功は奏した、今のところ、そう言って良いと思う。
公の場に於いて、私は上品に立ち振る舞い、柔らかい言葉を紡ぎ、
察しの良い淑女として、周囲に認識されていると望ましい。
いつか胸を張り、そう言える日が来ると良いな。
だから、私は、今日も努力する。
自分の知らぬ、理想の領域に達する為に。
5/17/2025, 12:05:47 PM