【刹那】
※同性愛などの描写が含まれます
長い長い夢を見た
とても楽しい、はずだった
あんな事が起きなければ…
俺は友達と楽しく話して学校から帰る途中だった。いつもは、小学生からの親友の優太と一緒に帰るのだが、その時は、高校で仲良くなった友達、茜(あかね)と明(あきら)、香織(かおり)と一緒に帰っていた。
「雪、今日、優太は?」
と明が言った
「今日は先に帰った」
「そ、…今日何する?」と香織が言った
「今日は…」
「どうした?」
明と香織と会話をしている時、横断歩道の上にいる優太が目に入った。
何をしているのだろうと思って様子を見ていると突然、後方から大型トラックが優太の方に進んで行った。
歩行者信号は青だった。
俺は声を出す前に体が動いていた。
止まることの無いトラック、恐らく運転手が居眠り運転でもしているのだろう。
「おい、雪!」
明の声なんて今はどうでも良かった。
助けないと!優太を!
「優太!」
手を伸ばした、つき飛ばそうとした。
けれど、その手は、優太に掴まれた、優太は俺を庇う様に抱きしめた。
その刹那、俺と優太はトラックに跳ねられた。
一瞬の出来事、なんでこうなったんだ、もっと早く俺が、いや、一緒に帰っていれば……
「ゆう……た」
頭が痛い
意識がゆっくり途切れていく、俺か、いや、優太の血か…嫌だ、まだ…
まだ…
耳元で声がした
「ごめんな、雪、俺ダメだ、まだ………に……の…………だよ」
優太が何を言ったのか聞き取れなかった、視界が真っ暗になって、何も聞こえなくなっていった。
いかないで、優太
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目を覚ました
見慣れない天井、慣れない香り。
「目、覚めたんだ」
そう、誰かが言った。声の主を探して視線を動かすと、隣に女性がいた。
「だれ、君?」
彼女の事は知らない。いや、覚えていないと言った方が正しいだろうか。
「そっか、やっぱ覚えてないよね…雪くん」
雪くん、どうやらそれが俺の名前らしい
「君は、前の俺を知っている、のか?」
「うん、知ってるよ、雪くんはね、誰にでも優しくて、運動神経も良くて、友達がいっぱいいるの!」
「そうか…今の俺とは真逆だな、そういえば、君の名前はなんて言うんだ?」
「私?私はね、私の名前はあかね、みそら あかね」
みそら あかね
それが彼女の名前…。
後で聞いたが海空 茜と書くらしい。
どこかで聞いた事があるような、それでも何も思い出せない。
全然、気にならなかったがなぜ俺はこの場所...病院にいるのだろう。
「なあ、茜、俺はなんでここにいるんだ?」
と聞くと茜はとても悲しそうな顔をした。
「交通事故、にあったんだよ…君は優しいから友達を助けようとして、その友達は男の子でね。でも、その子は死んじゃったの…君の親友だったのに」
「なんで、死んだんだ?」
茜の表情が段々暗くなっていく、
聞かなければよかった…。
「君を庇ったんだよ…」
俺を庇った?
「……ごめん」
なぜか謝った。
「雪くんは、雪くんは……悪くないよ、悪いのは、居眠り運転してた方だよ!だから、だから!」
耳鳴りがした
頭が痛かった
「うっ……」
「あ、ごめん、大丈夫?私、今日はもう、帰るね、私ね、実は███くんのこと好きだったの…
じゃあ」
好きか…
よくわからないな、今の俺には…
「ああ、またな…」
病室が静かになった。俺以外誰も居ない、そのはずなのに、誰かが言った。
久しぶりに聞いた声
【「ごめんな、雪、馬鹿だ、お前に本当のこと言えずに、死んじゃった、雪、俺、お前の事が…
…好きだよ……って言っても聞こえないか」】
誰だよ、君は、知らない、思い出せない、なのになんで
俺、泣いてんだよ
なあ、好きだった…
好きだった、君は一体誰なんだ!
4/28/2023, 1:23:32 PM