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『暗がりの中で』

暗がりの中で息を潜め目を凝らしていると、獣にでもなったような気になる。

きっと仲間たちも、同じように感じていることだろう。

俺は気配を殺し、辺りを窺い、手にしていた物をさっと放り投げた。

それから5分……10分……

「よし、もういいぞ」

仲間の合図で、詰めていた息を吐く。
それと同時に、誰かが部屋の明かりを点けた。

「うわ、なんだこれ!」
「誰だよ、チョコレートなんて入れたヤツー」
「道理で甘い匂いがすると思った」

先程までの緊張感が一気に消え失せ賑やかになる。
意外なモノが混入されているのも、闇鍋の楽しさだ。

俺は甘い匂いのする手を、みんなに気づかれないようそっと隠した。

10/29/2024, 3:44:51 AM