とある恋人たちの日常。

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「あれ、あなたのしているブレスレット。こんな透明でしたっけ?」
 
 先日、恋人になった彼女が、俺の付けている水晶のブレスレットを見てそう呟く。
 
 そう言われて俺は自分のブレスレットを見ると、確かに俺の記憶とは違っていた。
 前はもっとヒビ割れの水晶が何個かあったはず……。
 
 この水晶のブレスレットは人から貰ったもので、気に入って毎日付けているから誰かのと間違えたなんて思えない。
 
「なんでだろう?」
「なんででしょう?」
 
 ふたりで同じ方向に首をかしげていて。目が合うと笑いあっていた。
 
 ああ、しあわせです。
 
 そんなことがあってしばらくした日。水晶をくれた友人に会ったから、ヒビ割れのことをブレスレットを見せながら聞いてみた。
 
「なにか良いこと……あったね、そう言えば」
「おかげさまで」
 
 友人は俺に恋人ができたことを思い出し、呆れたように笑ってくれる。
 
 はい、俺は今しあわせです。
 
「だからだね」
 
 ビシッと、胸を張って答えてくれるんだけれど、何を言っているのか分からなかった。
 
「え、どゆこと?」
「この石、水晶のクラックって言うんだけどさ。願いが叶うとヒビが薄くなるんだよね」
「そんなことある!?」
「あるんだな、これが」
 
 ふんす!とドヤ顔で話してくれる。
 
「邪気を守ってくれたり、願いを叶えてくれたりする石だから、役目を果たしてくれたんだね」
 
 歯を見せて笑ってくれるその表情を見て、嬉しくなってしまった。
 
 友人は心の底から俺を応援してくれたんだな。
 
 
 
おわり
 
 
 
四一二、クリスタル

7/2/2025, 12:15:46 PM