『時を告げる』
馴染みのある小宇宙を感じる。懐かしささえ覚えるそれは儂のよく知る人物のものであった。だが、彼はとっくに命を落とした存在である。生きているはずがない。
よく探ってみると、懐かしさを覚える小宇宙は一つではなかった。やはり、いずれの小宇宙も既に死んだ者のものである。
それに気付いた時、儂は合点がいった。成程、死を司る彼奴らしい、陰険なやり方じゃわい。確かに、己の兵を無駄に消費するよりその方が効率がいいじゃろう。
だが、彼ら誇り高い黄金聖闘士が大人しく従うと思うかな。彼らの正義を思う心は例え死しても変わることはない。お前たちの安易な作戦は、必ずや己の首を絞めることになろう。
とはいえ、儂も指をくわえて黙って見ているわけにもいくまい。この仮初めの肉体とも別れを告げる時が来た。かつての友と、仲間と拳を交えることになろうと、儂は使命を果たし、必ずや冥王を討ち倒す。
既に戦いは始まっているが、これをもって開戦の時を告げるとするかの。ハーデスよ、首を洗って待っておれ。この時代も、必ずや我ら聖闘士とアテナが勝利するのじゃ。
儂は杖を振り、聖域十二宮の火時計に火を灯した。
9/7/2023, 12:13:04 AM