「実は、この世界は猫ちゃんに支配されているのだ」
突拍子もなく先輩が言う。何故かドヤ顔の先輩に、僕は「はあ」と曖昧な返事をする。詳しく話を聞けば、この世界はすでに猫ちゃんの支配下にあり、人類は猫ちゃんたちのお世話をするために人型を取っているらしい。なんともかわいい陰謀論である。
「で、なんで先輩はそんなこと知ってるんですか? もしかして猫ちゃん側?」
「そうだよ。今は人間の姿だけど、少しずつ猫に変わってる」
あ、なるほど。人間からも猫に取り立てられるのか。そして先輩はすでに猫ちゃんの世界の上の方にいると。確かに先輩にはどこか猫っぽいところがあると常々思っていた。後天的に変化した部分だったのだろうか。
「じゃあこれは猫舌の先輩にはいらないですかね」
そう言いながらさっき自販機で買ったばかりのカフェオレの缶をちらつかせる。ずっと握っているには熱すぎるそれに、先輩は目を輝かせて飛びついた。その反応は、どちらかと言うと犬っぽい。
手に入れたカフェオレを早速飲む先輩は、さっきまでの戯言をすっかり忘れたみたいにご機嫌で、「やっぱり世界は君のものなのかもしれないね」と言う。僕では分不相応なので、早いところ先輩を後継者に仕立てて引退してしまおうと思う。
1/16/2026, 5:08:03 AM