魔獣の王と人々から恐れられたこの私が、たったひとりの人間の子供のために、かつての同胞たちと戦うことになるとは、世の中わからぬものだ
魔獣の天敵である精霊の中でも、頂点の一角と言われる存在が宿ったせいで狙われることとなったその子供は、平穏を望み、魔獣との戦いなど望まず、むしろ仲良くなりたいなどと言う、心優しい子だった
あの精霊も、しっかり考えてから人に宿ってほしいものだな
この上なく居心地がいいのです、ではない
それはそうだろう
あんなに優しい子はそうそういない
とても優しい心の持ち主なのだから、そういった心に惹きつけられる精霊にとって最高の宿主なのも当然
問題は、精霊があの子に馴染むまでの間、眠りについてしまったことだ
戦う力を持たない子供に勝手に宿っておいて、守りもせずに眠りこけるなど無責任であろう
放っておけばあの子は必ず魔獣に襲われる
だから、私があの子を守らねばならぬ
傷つき、倒れていた私を助けてくれたあの子を
私を恐れず、友のように接してくれたあの子を
たとえ全魔獣を敵に回したとしても、裏切り者と蔑まれたとしても、私は守り切るぞ
心優しき私の友よ
ただ君だけのために、私はこの天地を震わせる王の力を、余すことなく行使しよう
5/12/2025, 11:10:28 AM