これで最後
幾度となくあなたさまへ会いにこの土地へ来ました。
あなたさまはいつでもそこにいてくださいました。
夕暮れでも、丑三つ時でも。
凛として、背を張って。
己が己を恥じることなど一切なく、誇らしげに。
だというのに嫌らしさはなく、
頼らしいその背を見つめるばかりでありました。
わたくしはもうここへは来られません。
あなたさまも、もうこの土地にはいられませんでしょう。
あなたさまは、ソメイヨシノ。
中を虫に食い破られて、朽ちることただ待つのみ。
わたくしは、そんなあなたさまに一目惚れをした愚かな鶴。
実らぬ恋を侍らせて、独り身を貫いた愚の骨頂。
己のことですから、もう死期が近いのはよくわかります。
ずっとお側にいた身ですから、あなたさまの死期が近いのも。
ですから、どうか。
これで最後にございます。
あなたさまの側で、永遠に、共に眠らせて頂きたいのです。
5/27/2025, 3:06:49 PM