よらもあ

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黄道十二宮のうち6番目、処女宮の主人は2人いる。

鏡合わせのように瓜二つの顔と身体は、広大な星空の中でもひときわ大きい。2人が一つの星座におさまっているのだから、それも当然なのかもしれない。それぞれが麦穂と棗椰子の葉を持ち、身を寄せ合っていた。
しかしいつしか2人は1人になり、もたらされる逸話も増え、様々な女神が星座に混同された。
それでもお互いを失わず、1人となっても2人は2人だった。

2人の中に存在する多数の女神たちの記憶、春がくれば自然と恋しくなる記憶は遠く、薄く、朧げになってしまっているが、それでも2人は自然とお互いを抱き締めた。久しぶりの再会を喜ぶ母娘のように。涙を流し、頬を寄せ、背中に回した腕は緩まない。

おとめ座を彩る女神たちの中に、冥界の女王の名がある。
処女の名を冠する可憐な少女は、光の破壊者の名に相応しい麗しい女性となった。
目も眩むようなその麗しい光は、仄暗い冥界の主を鮮やかに照らし、光に満ち満ちさせた。
冥界にもたらされた春は爛漫となったが、代わりに地上は春を失い凍てついた。

遠く朧げな女神たちの記憶の中、おとめ座の2人もまた春を迎えていた。
処女の穂先は、春の夜に青白く輝いている。




“春爛漫”

4/10/2024, 12:00:57 PM