「お盆が過ぎたら夏なんてもう終わりだよ」
北国の生まれの君がそう言ったのを思い出す。
あれから数年。夏はしぶとくなった。
夏の暑さは年々厳しくなって、お盆が過ぎても9月になっても夏は終わらない。
君は今、どうしてる?
夏が苦手な君は、涼しい場所を見つけるのが天才的に上手だったよね。
ちょっとした木陰とか、川辺から吹く風とか。
家の中は玄関が一番涼しいと言って、帰ってきた僕を驚かせたこともあった。
扇風機の風に、ぬるい、なんて文句をつけながら
アイスを頬張っていた君。
だから驚いたよ。
夏が苦手で冷たいものが大好きだった君が、
太陽みたいな男と去っていくとはね。
眩しくて暑苦しくて、いつもカラッと笑ってるような男。
きっと君はあいつの隣で、すっかり日焼けした肌になって、汗をかきながら笑顔を輝かせ、夏が似合うひとになったんだろうな。
僕はといえば、まだ君のいたあの夏に取り残されている。君のように上手く涼しい場所を見つけられないんだ。
君に追いつけないまま、今夜も僕は一人、ひんやりとした夜空を見上げるだろう、そんな夏。
7/15/2025, 3:36:37 AM