夜空を駆ける
「さあ願いを言え」と神龍は言った。
ようやくこの時が来た。
7つの星の付いたボールを集めるのは本当に大変だったから。
これで願いを叶えられるわ。
空を翔びたいの
重力から解放されて
ふわりと宙を舞い
月明かりを頼りに
星明かりを道標にして
美しく自由に夜空を駆ける
そんなふうになりたいの
さあ、叶えてちょうだい!
気持ちが昂るままに叫ぶ。
そんな私に、神龍は訝しげに言った。
「お前はもう翔んでいるが……?」
「えっっっ」
なんてことなの。
言われて初めて気付いた。
7つのボールを集めるために、私は沢山の修行を積んだ。
その過程で舞空術を習得していたものだから。
今、私は神龍の目線と同じ高さに浮いている。私はもう翔んでいる。
「……」
「……」
気まずい沈黙が流れる。
数分後、私は次に思いついた願い事をなんとか叶えてもらったわけだが。
「まったく、こんなことは初めてだ」
そうぼやく神龍は、呆れた様子で面倒くさそうに、しかし神々しく去って行った。
2/21/2025, 11:38:58 AM